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ベスランス国の南端。石切り岬につくられた湾港都市ヒューミリアには、獰猛な魔物たちが巣食う巨大な地下迷宮が存在している。いつ頃、どのような経緯でこの迷宮が形づくられたのか、いかなる文献・口伝にも示されていなかったが、ただひとつ、まことしやかに囁かれている噂があった。

〝この地下迷宮の奥深くには、「霊薬」の一壷が安置されている〟

霊薬とは第二紀末期、大陸全土を脅かしていた悪しきドラゴンの王〝澱みの主〟の竜血である。

ショラムの小領主イシリアドゥネが澱みの主を討ち果たした際、その血を九十九の壷に入れて故郷に持ち帰ったと伝えられており、血に宿った強大な魔力はそれを口(くち)にした者の老いを遠ざけ、死病を癒し、無限の活力を与えたという。

のちにオルムゴンド帝国の初代皇帝として君臨し、人の身でありながら三百余年に渡って治世を敷いたイシリアドゥネは、この霊薬の力が悪用されることを恐れ、自身が没する前に、それを人の手の及ばない場所に封印したと云われている。

「なぜ、その霊薬がヒューミリアの地下深くに置かれたのか」

「そもそも、霊薬なんてものが実在するのだろうか」

しかし、この神代に語られる万能薬の噂は、人々の心を掴んでやまなかった。

あなたは、なんらかの思惑を抱え、地下迷宮を踏破しようとヒューミリアを訪れた冒険者のひとりである。

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